後になって、あの時のお蔭で今の自分がある、と思うことが多々あります。今回は、その一つをお話します。
私は、中学から大学1年生の時まで、何度もひどい「いじめ」にあい、その都度、本当に悔しい思いを繰り返してきました。ときには、罵倒と暴力まで受けました。それは私が、小柄でド近眼で、スポーツも勉強もあまりできず、教室の片隅がよく似合う生徒だったからかもしれません。
これらの体験から私は、人を差別し、弱いものをいじめ、自分勝手な振る舞いをして目立とうとするような人は、生理的に受け付けられなくなってしまいました。
会社経営においても、弱者を排除して強い組織を造ろうとする人がいますが、弱者を排除することより、むしろ弱者を包含して経営していくことを考えた方が、組織力を高められるような気がしております。どんな人にも長所と短所があるのが、生身の人間だと思うからです。
この9月に、松下幸之助記念館へ行く機会があり、その時、偶然流れていた松下翁の講話の中に、強く記憶に残っている部分があります。それは、“トップに据えてよい人の条件”についてです。松下翁は、いくら仕事能力が高くても、人を差別し、私欲を持って経営に当たろうとする者をトップに据えた企業は、いずれ倒産するだろう。トップに推挙する最も大切な条件は、総ての社員の成長を願い、社員と共によくなっていくことを願う、人間性に長けた人物(人柄)を選ぶこと、と断言されていました。
まったくその通りであり、どのような社員であっても、会社の仲間であり、差別し、無視するようなことはあってはいけないと思います。そして、どんな人にも、その人にしかない、素晴らしい可能性が隠されているものです。私は、その可能性を見出すために、長年、掃除と秀観塾を続けています。