よく人から「なぜ、秀観塾を始めたのですか?」と聞かれますが、それは「お互いに気持よく働ける職場にし、会社をよくしていきたい。」との思いからです。
会社の創業当初、人を募集しても集まらず、年齢に関係なく、とにかくどんな人でも来てくれた人が社員。だから、精神的に不安定な人、働く意欲のない人、人をいじめる人、うその上手な人、と多彩な人たちが大半でした。一方、労働環境も最悪で、設備は中古ばかりで東南アジアの職場より酷い、と言われたことが印象に残っています。
そのような中にあっても、仕事は常にあり、仕事内容も単純作業の繰り返しだったため、そのような人たちでも何とかこなしていくことができました。しかし、社員間のもめごとは絶えることがなく、離職率も高く、常にハローワークに通い、無理やり頼み込んで来てもらうような状態でした。
なかなか常識も通じないため、どうやってまとめていけばよいか悩み続けておりました。
そのような時に名古屋中小企業家同友会に入り、仲間の経営者に悩みを聞いてもらい、社員教育の大切さを学び、社員教育への取り組みを始めました。
最初は、地元の高校の先生に頼んで社内勉強会を始めましたが、社員はチンプンカンプンで理解できず続きませんでした。次に、外部の勉強会に社員を出したものの、大半の社員が帰ってくるなり、講師の素晴らしい会社と自分の会社とのギャップを知り、「うちの会社はだめです」と言ってやる気をなくす始末。
もう外部に頼むのをやめて自分で行おうと決めました。
そこで始めたのが、幼稚園から行う人間教育です。「あいさつ、そうじ、はきものをそろえる」は、人が生活していく基本動作であることを知り、それを習慣化することで、お互いを大切にする気持ちを育み、コミュニケーションがよくなることを願って始めました。
最初は中々できませんでしたが、徐々に出来るようになってきた頃から、みんなの気持ちも落ち着いてきて、仕事にも熱心に取り組んでくれる社員が出始めました。
しかしながら、今度は自分たちの力量を超えた処遇改善を求めてくるようになりましたので、どのようにしたら希望が実現できる会社にできるのかを話しあう場を作ることにしました。それが、一泊二日の秀観塾の始まりです。
その時の秀観塾の特徴は、運営を自主的に行うこと、朝食は飯盒炊飯、昼食は弁当とすること。KJ法を使い、必ず全員の意見を取り入れること。そして、MGも行って収支の勉強もすることにしました。
朝は飯盒炊飯で、それぞれ自分達で炊き上げますので、その良し悪しもそれそれぞれに違いますが、例え失敗しても、必ず次回はもっといいご飯を炊く方法を工夫します。一方、与えられた弁当に対しては、必ず値段や味の良し悪しの評価を言います。これにより、自分達で作ったご飯には愛着が生まれることを体感してもらうことができます。
そしてKJ法では、全員に意見を出してもらい、みんなの意見をまとめることで連帯感を作ることができました。経営もまったく同じで、自分達の意見を入れることで、自分達の会社、仕事へとなるからです。そして、MGで財務の知識を培ってもらい、数字の裏付けを持った処遇改善を全員参加の経営で行うことを学ぶ場としました。
会社の成長の根幹は社員の成長にあり、そのことを秀観塾を通じて具体的に学び合っていくことを目指して、これを「ビラミックス成長理論」として現しました。