私も来年で70歳となり、人生の後半に入ってきました。人生を振り返ってみますと、つまらないことで意地を張ってみたり、目先の利を守りたいが為に、本当に大切なことを見失って失敗したこともありました。そして今、若い人たちを見ていると、私と同じような失敗をしていても、その原因が分からずに悩んでいる人が目につくようになりました。
ある日のこと、東海神栄第一工場近くのガード下の道路を行きかう車を見ていて思いました(写真)。この道路は、ガード下で急に狭くなります。そのため、対向車が来るのを見ながら突っ込んでいけば、途中ですれちがうことも難しくなり腹立ちますが、先に停まって相手が通り過ぎるまで待つことで、スムーズに行き交うことができます。同じ道幅でも、我を通せば道幅は狭く感じ、相手を立てれば道は広がります。
人生も、まったく同じで、我を通そうとすることで衝突することがありますが、ちょっと控える心構えがあれば、大半のことはスムーズにいきます。
以前、鍵山秀三郎さんが、「終身路を譲るも、百歩を枉(ま)げず」(生涯道を譲る生き方をしても、百歩にもならないものです)と老子の言葉を教えてくれました。
「極力、譲れることは譲るという考えで生きてきましたが、私の生き方を見た人が、『譲ってばかりいたら人に先を越されてしまう』と心配してくれました。実は、譲れることを譲ったことで、人は動いて(助けて)くれて、目的を早く達成できるものです。逆に、意地を張っている人で、相手が気持ちよく動いてくれることを見たことがありません。そして、意地を通す生き方をしてきた人ほど、人生を狭くして気を病み、晩節を汚しています。ですから、譲れるものは譲り、本当に大切にしなければならないものを大切にしていく生き方が必要ですね。」
人生で起きる大半の悩みは、人間関係から生じています。人間関係が良好であれば、問題が課題となって前向きに取り組むことができ、乗り越えていくことができます。しかし、人間関係が悪化していますと、問題がこじれ、本来の問題ではないことにまでに波及してしまい、悩みが倍加していきます。
そこで、人間関係を良好に保っていくコツが「ゆずる心」です。本当に大切にしたいことを、何度も何度も問い直していきますと、お金とか物とかではない世界が見えてきます。そして、不思議なことに、その後にお金とか物が付いてくるようです。このことが本当の幸せな生き方だと思う昨今です。