9月10日に、ナカヤマ・グループ創業者の田中春雄会長が、享年94歳で天寿を全うしてあの世に旅立ち、早くも二ヶ月が経とうとしています。
先月は会社創業時のことを書きましたので、今回は会長の文化貢献について書きたいと思います。
自宅が中仙道沿いにあったことから、恵那の歴史に興味を持ち、その勉強をする中で、恵那が好きになりました。恵那の文化に触れ合い、地域の人達に役立ち、喜ばれることが、仕事への励みとなっていったようです。特に60才以降は、よき文化を残していくことに協力できることが、生き甲斐となっていきました。
90歳になった時、人生を振り返って、次のように話してくれました。
「私は、三重県四日市市水沢から無一文で恵那に来て、恵那の人達にご厄介になり、恵那が本当に好きになった。そこで常々、恵那の人達に何かお返しをしなければいけない、と思いながら生きてきた。
人は、お金だけのために生まれてきた訳ではない。だから、経営者としても、お金ばかりを求めて生きている男と言われたくなかった。お金も、時間も、後に残る人達のために活かしてこそ、充実した人生と言うことを自分なりに実証したかった。
こうして、地域の人達にも喜んでいただき、自分も楽しみながら人生を歩むことができたから、私ぐらい幸せな者はないと思っている。私は、この二度とない人生を100%生きてきたので、我が人生に悔いはない。これで文句を言ったらバチが当る。 本当にいい人生だった。ありがとう。」
そして、遺言書にも 「自分のしたいようにさせてもらった。ただ、お金を残さなかった事を、申し訳ないと思っている。義人君、本当に親のわがままを許してくれてありがとう。」と記されていました。正に、生涯現役で、健康にも恵まれ、多くの人たちと楽しみながら長寿をまっとうした人生でした。
会長は、どのような高額な浮世絵購入や寄附であっても、決して会社のお金を使うことはなく、公私混同がありませんでした。そして、ただ寄附するだけではなく、自らが現場に入り、作業を共にして事を成していったことは、本当に素晴らしいことだったと思っています。
ここに、会長が残した主だった地域貢献を紹介させていただきます。
【桜百選の園】
山火事にあった中山道沿いの山林再生に「桜百選の園」を提案。市民参加で植裁された桜百種類を寄贈。
【寺院の花蓮】
観音信仰に厚く、恵那三十三観音や恵那各寺院に、蓮鉢と12年間蓮根の植え付けを寄進。恵那市内に、数箇所の蓮の名所ができました。
【西行梅露庵】
西行を偲ぶ梅露庵の整備に、京都の名桜「祇園枝垂れ桜」庵一円に枝垂れ梅を植裁寄贈。梅の名所となる。
【中山道広重美術館】
30年間に亘り収集した歌川広重「木曾街道六拾九次」など四百点に及ぶ浮世絵を、美術館開館に際し寄贈。世界的なコレクションと評価されています。