先日、親しくしている同業者から聞いた話です。長年取引をしている重要客先から、30%のコストダウン要請が来ました。まさかこれほどのコストダウンに応じる会社はないだろうと思っていたところ、その値段に応じる会社が海外にあり、今後は、その会社に発注するので了承してほしいとのこと。愕然としてしまい言葉がなかった、と話していました。
確かに、今年に入ってからも、自動車、半導体、工作機械、家電、と日本経済を支えてきた輸出産業の回復は、まだ見込むことが出来ず、一部で国のエコ対策による受注増加がみられる程度です。そこで大手企業を中心に、より低価格路線にシフトして、国際競争に臨むところが多くなり、コストと調達先の見直しが始まりました。
この話しを聞いた時、このままでは旧来のビジネススタイルは行きづまり、東南アジアを一体としたビジネスが急速に進み、少し前にあった繊維産業、陶磁器産業の生産拠点の海外移転と国内の空洞化現象が、今まで以上に、全ての産業において起きていくのではないかと危惧しております。
特に、中国、ベトナムで現在行われている大型投資から生まれる生産量は、日本の在来の企業規模をはるかに超えるものであり、安価で大量の商品が、今まで以上に世界中にばら撒かれていく感じがしております。
そのベースとして、アジアの国別賃金格差があります。日本の高卒初任給15万円、台湾8万円、中国2万円、ベトナム1万円の賃金格差から生じる、日本の国際競争力の低下です。この賃金格差がなくならない限り、日本でのコスト高は続き、その為、国内の中小企業は、大幅なコストダウンは見込めず、受注したくとも採算割れが生じ、開店休業状態となり、経営が圧迫されていくものと思われます。正に、シャッターを下ろさざるを得ない状況となるのです。
そのような時代の流れの中にあって、何か妙案はないかと、そのシャッター通りを見ましたところ、健全に経営を続けているお店を見つけました。
そのお店は、特定な「お菓子屋」「寿司屋」ではありますが、その両者に共通していることは、「特化した商品力の高さ(研究熱心)」と、「外とのネットワーク力(人間関係・情報発信)」であり、それを進める「人材力(教育熱心)」の高さです。そして何よりも、地域の評判がよいこと、があげられます。
この事例からも、規模を追うことなく、東南アジアではまねの出来ない、木目の細かい品質レベルの商品を作り出せる会社になること、そして、地域社会に貢献し風評を大切にしていくこと、が生き残る道だと思いました。