1991年11月23日、この日は私の第二の誕生日となりました。
それまでは、人生の幸せ=経営の成功=お金、との考えが強く、高度経済成長の波に乗って拡大してくことが総てでした。しかし、バブル崩壊によって売上が急減し、経営の危機に遭遇し、それまでの価値観が崩れ去っていく、まさにその時、「人間は一生のうち逢うべき人には必ず逢える。しかも一瞬早過ぎず、一瞬遅過ぎない時に」(森信三語録)の言葉のごとく、鍵山秀三郎相談役との出逢いがありました。
そして、藁にもすがる思いで、翌朝から近くの神社の掃除を始めました。掃除を通じて、神社が本来の姿を取り戻し、見違えるように変わっていくことに感動し、これまでの拡大志向ではなく、「今を謙虚に受け入れ、今あるものの良さを引き出して行くことで道が開ける」ことに気が付きました。
すぐに掃除を職場に導入し、全社員で取り組むことにしました。また、この感動を友人にも伝えたく呼びかけたところ、35名の仲間が集まり、鍵山相談役の下で「第1回大正村掃除に学ぶ会」を開催することとなりました。それ以降、この活動が日本各地に広がっていくと同時に、世界にも広がり、ブラジル、台湾、中国、ニューヨーク、ルーマニア、イタリア、トルコ、ハンガリー、チェコでも行われるようになっています。
なぜ、これ程までに海外の人たちが掃除に興味を持ち、自国に取り入れようとしたのでしょうか。これまで西洋の人たちは、掃除は下層の人たちが行うものとの固定観念が強く、下座に降りていく事を嫌う傾向がありました。しかしながら、実際に掃除を体験することで、汚れた環境が美しくなって本来の姿を取り戻していくことに喜びを見出し、参加した人たちと共通の価値観も生まれました。そして、整然となった環境が、場のエネルギーを高めていく事に驚かれたようです。
これまで西洋では、上下に関係なく下座に降りて社会をよくしていこうとする活動は過去になかったことから、体験に裏打ちされた活動が世界に広がっていくことを願わずにはいられません。
そして国連は、2030年までに持続可能な社会を目指して「SDGs」を世界的運動として展開していますが、掃除活動こそ、その根幹ともなる活動と思っております。