私の夢は、ピラミックス企業成長理論に基づいて、企業を段階的に成長させ、小さな世界企業を作ることです。
30年前に、このピラミックス企業成長理論を考えて発表した時、最初に評価してくださったのが、アメリカ・ユタ州のブリガムヤング大学(Brigham Young University)経営学のクラーク先生でした。
クラーク先生は、2013年に退官するまでの6年間、毎年、MBAの卒業生研修で私共の会社を訪れ、私のプレゼンを聞いてくださいました。また、4年前には、フランスのマッキンゼーのコンサルタントが評価してくれました。
ピラミックス企業成長理論は、経営戦略、商品戦略、人財戦略、財務戦略の四面からなり、5段階を一段づつ上がることで、みんなが誇りの持てる小さな世界企業となっていく、という理論です。そして、その推進力は「秀観塾と掃除をベース」としての人財教育であり、情報を共有する中で、全員参加で経営計画を作成し、目標を持って会社の成長をなしとげていく、というものです。
確かにこの間、職場の活性化は進み、三段目まで上がってきましたが、今日まで四段目に上がることが出来ずにきました。なぜ四段目に上がれないのか。それは、ピラミックス企業成長理論が間違っていたのかと、自問自答する日々でした。
そんな時、鍵山秀三郎相談役の「うまくいかない企業ほど、大きなことばかりに目を向けて、小さなことをおろそかにしている気がします」の言葉に出逢い、この言葉にこそ、四段目に上がれない答えがあると思いました。
いかに立派な経営理念や方針があっても、言っている事と現場で行われていることの遊離が多々あって、正に万事に徹底がなされていませんでした。その為に、同じ失敗を繰り返したり、小さなことを見過したりしていることで、せっかくいいところまで行っては、又、崩れてしまうような繰り返しをしていたのです。
そこで今、このコロナ禍の中、先が見えない状況であるがゆえに、社員の人たちにも、もう一度ピラミックス企業成長理論を伝え、夢を与え、小さなことをおろそかにしない社風づくりに挑戦していくことを伝えます。
事実、身近なところでは、小さなことを大切にして成長されてきた、小島プレス工業、伊那食品工業、イエローハットがあります。
小島プレス工業の元会長の小島鐐次郎さんは、トヨタ自動車を客先に、30社のグループ会社と7500人を有する素晴らしい企業グループを作られました。その小島鐐次郎さんは、工場を回る時、必ず各事業所のスクラップやゴミ置き場を見たそうです。スクラップやゴミを見れば、その事業所の内容が手に取るように分かるとの事で、ゴミを見ながら幹部を教育したそうです。
たかがゴミですが、そのゴミから読み取れることから品質、コストへの意識付けをしたことに、今日の小島プレス工業を築いていかれた一因があると聞きました。
次に、伊那食品工業ですが、零細企業から始まり、今日では工業寒天のトップメーカーとして超有名な会社です。塚越会長の人の幸せを求める経営理念を基に、二宮尊徳の「積小為大」を大切にされ、誰もが見過すような小さなことにも気を使う万事徹底の社員教育をされてきました。
例えば、「社員トイレで、小便器の周りに小便が飛び散っていることは、絶対にありません」「お客様や社員通路で、木の枝が出たまま放置されていることも、ありません」「社員の駐車は、数センチの狂いなく正位置に止めてあります」等々、身近なことを徹底されています。
特に素晴らしいことは、塚越会長の気持ちを汲んだ幹部社員が、小さなことにも気が付くように部下と膝を交えて話し合っている姿でした。
そして、イエローハット創業者の鍵山秀三郎相談役ですが、「仕事でどれだけ会社に損害を与えようと、私は叱ったことがありません。ただし、人を卑下したり物を大切にしない行為に対しては許しません」と、誰でもがその気になれば出来ることを「凡事徹底」されて、今日のイエローハットを築かれました。
残念ながら、ナカヤマ・グループでは、私は勿論、幹部の人たちも、小さなことを積み上げていくことで偉大な効果が生まれる事に気が付く事が出来ませんでした。
私は今年74歳となり、あとどれだけ会社への支援が出来るか分かりませんが、もう一度、若い時から追いかけて来た「ピラミックス企業成長理論」の実現に向けて行きたく思っております。