5月のメッセージで、イエローハット創業者の鍵山相談役の言葉として「うまくいかない企業ほど、大きなことばかりに目を向けて、小さなことをおろそかにしている」と紹介しました。
これまでナカヤマ・グループは、素晴らしい経営理念、経営方針、全員参加型経営、そして、そのベースとして掃除と秀観塾活動を継続しながら経営をしてきました。しかしながら、次の段階になかなか上がることができなかったのは、小さなことを見過し、徹底できていなかったことが原因でした。そのことを、より鮮明に感じる機会がありましたので紹介します。
それは、5月に名古屋での早朝勉強会で武田数宏先生(伊勢青少年研修センター所長)の講話を聴く機会があり、その講話の中の「秘中の秘」の話で納得した次第です。
武田先生の母方の祖父・和田久治さんの話です。和田さんはノコギリの目立職人で、12歳で会津若松の鍛冶屋に丁稚奉公に入り、26歳の時にノコギリ制作と目立て業として独立されました。特に和田さんの作る山ノコギリは、最上級のノコギリとして高い評価を得て注文が殺到したそうです。その評判を聞いて多くの弟子入りがあり、50名程、独立させたそうです。
弟子の育成には、本当に誠心誠意、丁寧に教えたそうですが、「秘中の秘」だけは、弟子が独立する時に限り伝授したそうです。勿論、その「秘中の秘」は、他言は無用で家族、親戚縁者であっても語ることは禁止されていたそうです。
そこで、長年、武田先生は、祖父のいう「秘中の秘」はなんであったのか気になって、お弟子さんたちに聞いて回ったのですが、誰も答えてくれなかったそうです。しかしある時、祖父の実家を整理する機会があり、祖父の遺品の中から、それらしき書き物が出て来たそうです。喜んでその箱をあけた時、書かれていたのは「丁寧に行うこと」一言だけでした。
その話を聞いた時、身震いするほどの感動を覚えました。これまで私は、何事も「丁寧に行うこと」なんて当たり前だし知っている、と聞き流していました。しかし、長年経営をしてきて、最近になって、その言葉の重さをやっと心底、自分のものとして受け止めることが出来ました。
和田さんの凄さは、弟子の成長を見ていて、その言葉がストーンと腹に落ちる時を見計らって、独立を許し、言葉を贈った、と思われることです。いくらいい言葉であっても、受け皿がしっかりしていなければ、生きてこないものです。
私も30年近く、鍵山秀三郎相談役の指導を仰ぎながら掃除をしてきましたが、やっと「小さなことにも丁寧に徹底してくことの大切さ」の重さに気がつきました。私の人生も、再スタートです。