今は亡き父田中春雄前会長が、四十年近く前に植えた桜が満開となり、多くの人たちの心を和ませてくれています。
東海神栄の本社の周りには、約三十本ほどの種類の異なる桜があり、三月末から四月末まで代わる代わるに咲き誇っています。中には、御衣黄(ぎょいこう)という淡黄緑色の花びらを咲かせる珍しい桜もあります。
恵那市まきがねの桜百選の園(西行の森)には、春雄前会長が全国各地より取り寄せた百本の桜が咲き誇り、永田の西行塚のある梅露庵では、前会長が京都まで出向いて頼み込んで譲ってもらった由緒ある枝垂れ桜が立派に育っています。そして、自宅では五本の桜が満開になりました。
前会長は晩年よく、「私は仕事をすることが大好きだったが、お金儲けだけで生きている男だと言われたくなかった。お金を地域の人たちのために活かしてこそ、充実した人生だと言うことを自分なりに立証したかったから、自分のできることに取り組んできた。お陰で、自分も楽しみながら好きなことをさせてもらってきたから、私ぐらい幸せな者はいないと思う。」と言っていたことを思い出しております。
桜を植えた時は、まだ苗木の状態のものも多く、今のように咲き誇った姿は見ていなかったと思いますが、頭の中では、桜が満開になり、家族や市民の人たちが桜の下で楽しんでいる姿があったと思います。
こうして咲き誇る桜を見ていると、まだ見ぬ先の楽しみを追い求めていた春雄前会長の生き方が、私も七十六歳になり、やっと分かってきた思いがあります。