よく、田中さんは会長となられて楽隠居の身と思われますが、日々何をされていますか、と尋ねられることがあります。確かに、私は会長職となり経営を後継者社長に譲りましたので、これまでとは変わってきました。そこで今回は、私が取り組んでいる仕事を紹介いたします。
一つ目は、最も大切にしている社員の人間的成長を後押しできる企業風土の支援。二つ目は、前会長である故田中春雄が地域に残した中山道美術館、梅の里の梅露庵、地域文化への支援活動。三つ目が、日本を美しくする会への参加協力です。そして今年は新たに、社員とOB社員は勿論、地域の人たちにも役立つ健康サロンの開設を行います。
特に私が大切にしているのが、社員の人間的成長を育む企業風土への支援で「掃除と全員参加の経営」です。毎朝7時前には会社に出て、8時まで率先して早朝掃除を行っております。また、毎週月曜日には白坂のお不動様の掃除、毎月25日には市神神社の掃除を続けております。
次に、全員参加の経営を促進するために、年二回の拡大秀観塾(全員参加の経営計画づくり)、複数月にはスタッフさんを対象にした半日秀観塾にて、よき人間関係と掃除の大切さの講話をしております。
また、社員の人間性を高めるために、三ヶ月に一度、推奨図書を選定し、希望者には書籍を無料配布して読書を奨励しております。そして、読書感想文を提出してもらい、その中から優秀感想文を選んで職場にて発表し、お互いの気づきを共有するようにしております。
これらの継続が、会社のみならず社員の人たちにもよき影響を与えていることを、昨年末、二人の元社員と出会ったことで、改めて知る機会がありました。一人は、四十代の働き盛りの元社員。もう一人は、定年まで勤められた九十歳の元社員です。
四十代の元社員から、「まだ読書の推奨と感想文活動はされていますか?」と聞かれたので、「続けています」と答えたところ、「やっと、読書の大切さが、この歳になって分かってきました。」「部下を持つようになって、部下の思考能力の幼稚さと自活力のなさに唖然としています」と話してくれました。
そして、「会長が常々読書を勧めてくれたことで、物事を広く考えることが身に付き、自分を見直す機会ともなっています。今では、子供たちと本を大切にする家庭にしています。」と話してくれました。
もう一人の九十歳の元社員は、「この年まで幸せな人生を過ごすことができたのは、あんたのお陰や」と言ってくれました。
「どうしてですか?」と聞いたところ、「何か困ったことが起きた時は、秀観塾や会社で教えてもらったことを思い出しては対処してきた。明元素(明るく、元気で、素直)は、今でも生活の指針にして前向きに考えるようにしている。今でも研修でもらったテープや本を大切にして持っている。」と話してくれました。
この二人の元社員の話から、私の一番の仕事は、これまで通り、社員の人たちの成長を育む企業風土の育成支援であり、共に働いている社員やOBの人たちが幸せな人生を歩んでくれることへの協力だと思っております。