これまで多くの仕事に携わってきましたが、今回、特に紹介したいものがあります。それは、陶磁器製造にとって最も重要と言われる「絵付け」に使われている弊社の製版技術です。
そもそも日本の陶磁器の40%が東濃地区で作られており、典型的な地場産業として長い歴史をもっています。原料から製品完成、そして販売までを一貫して行っている企業は少なく、大半が細かく分業化されていたことから、近代化が大変遅れていました。
陶器への絵付けは、手描き、転写紙、パット印刷法、シルクスクリー法、ダイレクト印刷法などがありますが、量産向けにはパット印刷法が最も多く活用されています。しかしながら、パット印刷法では、原版通りの仕上がりが難しく、多くの問題を抱えていました。その上、製版が出来る地元の会社が、当時1社しかなく、経験と勘に頼る旧態たる製造方法で、業界全体の存続に関わる問題となっていました。
このような状況だった2014年、弊社の交告部長(当時)が所属していた青年塾の仲間で陶磁器業界大手の大東亜窯業の楓英司さんから、製版のことで非常に困っているとの相談がありました。これまでの常識として、製版の材料は銅板を使うことが一般的になっていましたが、弊社はステンレス板を提案しました。しかし、以前ステンレス版を使った経験から、バリが酷くて使い物にならず、ステンレスと聞いただけで現場の人たちが拒否反応を示すような状態でした。
しかし、そこであきらめることなく、交告部長と楓さんがタッグを組み、約1年という時間を掛けて問題点を一つ一つつぶしていったのです。もともと弊社では、電子部品に使うステンレスの精密エッチング技術にたけていましたので、長年の経験を活かしてバリを除去する技術を開発し、銅板に負けない表面の滑らかさを確保することができました。
同時に、顧客の品質要求のデジタル化により、これまでの経験と勘に頼った製造から、高い精度で高品質の製版が出来るようになり、早速に大東亜窯業での採用が決まり、高レベルな陶磁器が作られるようになりました。
その後、大東亜窯業の社長となった楓さんと共に、業界全体への品質向上に向けての取り組みが始まりました。お蔭さまで、毎年新年に開催される陶磁器見本市に行く都度、素人の私でもわかるほどに、陶磁器の品質が向上しているのを感じるようになりました。
こうして今では、大東亜窯業様一社から客先が25社ほどとなり、パット印刷法を取入れている企業の90%は弊社のお客様として、陶磁器業界にはなくてはならない存在となったことが、大きな誇りでもあります。