今、一番顕著に現れているのが、日本の家族制度の崩壊による核家族化です。
昔は三世帯同居が普通でしたが、今は結婚すると家を出て、別々の生活をするのが普通になりました。そして、老後は老人ホームか病院で晩年を過ごし、子供達に世話にならない世帯が増えています。
このように、長男が跡取りとして家系を繋げてきた家父長制度が崩壊し、空き家の急増にみられるように跡を継ぐ人がいない家庭が多くなってきました。
この家族制度の崩壊が、企業経営にも大きな影響を及ぼし、跡取りのいない企業が急増し、廃業の増加とM&Aに見られる企業売買が普通となってきました。
これに拍車を掛けているのが、今回の政府の働き方改革です。
これまでの日本的経営は、金銭以上に仕事を通じて働く喜びや社員の人間的成長を育むこと大切にして家族的経営を心掛けてきました。
しかしながら今回の働き方改革は、海外と同じように労働は苦役であり、会社における拘束時間は賃金対象とする考えを基準としています。その為、働くことは苦役であるという視点から、残業規制をはじめ就業前後の社員教育や準備等に対して、日本人が誇りとしてきた勤労思想は大きく転換を求められています。
しかし、どのような時代になろうとも企業経営の継続には「収支バランス」が大原則となります。それゆえ、休日の増加を初め労働時間の短縮や教育時間の残業対象は、時間当たりの生産性を上げなければいけないこととなります。
このことから、これまでの日本的経営を続けることは大変難しくなり、トヨタですら、今後、終身雇用制度を見直さなければいけないとのコメントを出しています。
具体的には、経費増から赤字企業が増え、経費削減の為に正社員を増やすことができなくなり、パート社員、それもフルタイムではなく短時間パートの雇用が増大していきます。
政府の「働き方改革」政策では、生産性の低い企業はつぶれ、つぶれた企業の社員はより収益性の高い企業に移動していけば、日本の企業はより強くなっていくとの安易な考えがあると思います。
これまで安泰だと思われていた人たちも、雇用条件は崩壊し、大変厳しい時代に突入していきますから、今後は各々が仕事のプロとしての意識を持って自己を向上させていかないと、雇用を自ら失っていく時代になると思います。
また、このまま行きますと、より一層、物や能力中心思考の社会となり、時代に対応できない人たちの行き場のない格差社会となっていきます。そして、凶悪な犯罪も増え、外国と同様、安全安心は自分で守る時代となっていきます。当然、家族関係も薄くなり、折角大切に育てた子供達も、親の面倒をみる気持ちすらなくし巣立っていきますから、孤独な老人が増え、立派な家屋敷も朽ち、家督すら一代となっていきます。
一方、企業経営においても、日本の家父長制度の崩壊と西洋的労働観が浸透し、経営者の考え方も変わり、廃業や企業売却が普通となり、家庭も企業も一代で大きく変わっていく非常にドライな社会になっていきます。
しかしながら、私は、これからも仕事を通じて働く喜びや社員の人間的成長を育むことを大切にした「家族的視点」での経営を心掛けていきたいと思っています。
どこまで行っても人間にとって大切な事は「心」です。その「心」の繋がりとは、よき人間関係を築いていくことにあります。みんなが心を一つにして頑張れば、なんとかなっていけるものと信じています。